アッケシソウ〔学名Salicornia europea L.→ラテン語:Sal(塩)+cornu(角笛)〕は、厚岸町の名前のついた植物で、別名サンゴソウとも呼ばれています。明治24年(1891)、厚岸湖の牡蠣島において初めて発見、採取され、札幌農学校(現北海道大学)宮部金吾教授によって、その採取地である厚岸の名を冠して「アッケシソウ」と名付けられました。北海道を代表する塩生植物の一つでもあり、特に北海道の東部に分布する一方、厚岸から遠く離れた瀬戸内海沿岸や東京都の埋立地、さらには岩手県や宮城県での発見例も報告されています。
この植物は、アカザ科の一年草で、厚岸湖岸のように潮の満ちひきにより定期的に冠水する塩湿地に生育します。5月頃から緑色の芽を出し始め、夏から秋口にかけて20㎝から30㎝ほどの高さに成長します。秋には茎全体が赤く色づき、まるで赤い絨毯を地面に敷いたかのようになります。
厚岸町のアッケシソウは、大正10年(1921)に「厚岸湖牡蠣島の植物群落」として国の天然記念物に指定されました。しかし、波浪や流氷、昭和27年(1952)の十勝沖地震や昭和35年(1960)のチリ沖地震などにより牡蠣島の地形が変化し、干潮時でも水没している状況になり、今後、回復も見込めないことから、平成6年に天然記念物の指定が解除されました。アッケシソウは平成27年(2015年)現在、絶滅危惧種Ⅱ類に指定されています。
この私たちの町の名前がついた植物、アッケシソウを後世に残そうと厚岸町教育委員会文化財係が中心となり、平成17年(2005)に港町に試験栽培地の造成を実施するなど、アッケシソウの保護増殖に取り組んできました。郷土館前では昭和57年(1982)より人工栽培を行い、現在も来館者を楽しませています。
また、令和4年(2022)から厚岸湖岸チカラコタン地区に造成した栽培地で、人工栽培を行っています。